リージョナリズム

リージョナリズムとは、地域主義・地方主義を意味する言葉です。日本では国際的な経済・社会・軍事といった事柄と結び付けられることが多いのですが、美術的な意味では1930年代のアメリカで見られた絵画の傾向のことを指します。資料によっては「リジョナリズム」と表記されることもあります。

リージョナリズムが生まれた背景には、世界恐慌を受けて孤立主義・不干渉主義を掲げていたアメリカの外交姿勢があります。アメリカの芸術家のなかには国の外交姿勢の影響を受け、ヨーロッパ・モダニズムや国際主義への反発を強め、写実主義へと目を向ける者もいました。

リージョナリズムではアメリカ社会のアイデンティティとして、地方労働や西部開拓、中西部の田舎町、筋肉質な労働者などがよく題材になっています。移民によるアメリカの開拓時代を回顧するような作品を制作しており、愛国主義・保守主義といった側面を持ちながら、見る人にはノスタルジーを感じさせるのが特徴です。

リージョナリズムを推進したのは、画家のトーマス・ハート・ベントンです。壁画の制作にも力を入れており、絵画作品の『ハック・フィンと黒人ジム』『ペルセフォネ』に加え、壁画作品『アメリカ生活の絵画』などを制作しました。

ほかにも、ジョン・スチュアート・カリーやグラント・ウッドもリージョナリズムの影響を受けた画家として挙げられます。ジョン・スチュアート・カリーは『カンサスのトウモロコシ畑』『Ajax』、グラント・ウッドは『アメリカン・ゴシック』などを制作しました。