ヴォーティシズムとは、1910年代のイギリスで興った芸術運動のことです。別名「過巻派」と呼ばれることもあります。ダンス・労働・戦争といった大きな動きを伴うものを題材とし、鋭い画面構成やフランスのキュビズムを思わせる幾何学的な形態を取り入れた作品が制作されました。
ヴォーティシズムが興った背景には、1910年代前半のイギリスで、イタリア未来派展の開催やイタリアの詩人F.T.マリネッティの来訪があったことです。これらの出来事がイギリスの若手芸術家に刺激を与え、機械の美しさやダイナミズムを賞賛するグループの結成に繋がりました。
中心的な人物であった画家のウィンダム・ルイスは、後期印象派を評価する批評家ロジャー・フライに対抗し、1914年にレベル・アートセンタを設立します。さらにF.T.マリネッティから離れ、機関誌『ブラスト(Blast)』にて「ヴォーシスト宣言」を発表。1915年にはF・エッチェルをはじめとした7人の芸術家を招へいし、「第1回ヴォーティシスト」展を開催しました。
ほかにも代表的な作家として、イギリスの画家のローレンス・アトキンソンや、女性画家のジェシカ・ディスモアなどが所属していましたが、第一次世界大戦の混乱の影響で新聞や雑誌での評判はふるわず、グループのメンバーは個々の方向性へと分散することに。1914年から約4年間の活動に幕を閉じました。短い活動期間ではありましたが、当時の潮流から逸脱した革新性や、抽象美術への反応など、現在はヴォーティシズムを再評価する流れも見られます。