五彩

五彩とは、赤・青・黄・緑・紫といった複数の色で絵付けした陶磁器のことです。「五色」「錦手」「赤絵」といった名称で呼ばれることもあります。5種類の色を使っているため「五彩」という名称が付いたわけではなく、複数の色を使っているという意味合いで使われています。

五彩の起源は明らかになっていませんが、発掘調査や世界各地の陶磁器の調査により、元の時代(1279~1368年)に中国の景徳鎮という場所で始まったという説が有力です。採算性を気にせず陶磁器を生産できる、官営の工房で五彩を作っていたと推測されています。

民間の工房で生産した五彩は分かっていない部分が多くありますが、初期のものはその味わい深さから「わびさび」の考え方に合致しているとして、日本で人気を集めていたようです。明の時代の嘉靖年間(1522~1566年)には金を取り入れた「金襴手」も登場し、五彩はさらに華やかなものへと発展しました。

日本に五彩の技術が伝わったのは、17世紀中ごろと考えられています。17世紀初頭から白磁の生産を始めていた九州の有田(現在の佐賀県西部)で、五彩が導入されたようです。当初は中国産の絵の具を使って中国風の絵を描いていましたが、17世紀後半には日本らしい図柄でも使用するようになりました。

五彩は日本の伝統工芸にも深く根付き、現在も佐賀県の有田焼や石川県の九谷焼をはじめ、数多くの産地で生産されています。使用する色の種類の豊富さから、華やかで自由な表現を楽しめるのが五彩の魅力です。