加賀友禅

加賀友禅とは、現在の石川県金沢市周辺で生産されている着物のことです。友禅は日本の伝統的な染色法で、絵柄の輪郭に沿って手作業で米を原料としたデンプン糊を置き、布を染めます。加賀友禅は京友禅と江戸友禅に並んで「日本三大友禅」の一角を担っており、1975年(昭和50年)に国の伝統的工芸品に指定されました。

もともと加賀は麻や絹の産地であり、水資源にも恵まれ、染物づくりに適した土地柄でした。15世紀中ごろには染物の生産が盛んに行われており、江戸時代になる頃には200軒近くの染物屋があったそうです。加賀友禅は京都で友禅染を始め、晩年は加賀に移り住んだ宮崎友禅斉の指導によって発展しました。

加賀友禅の特徴は、「加賀五彩」を配色の基調にしていることと、絵柄の写実的な表現です。加賀五彩とは藍・黄土・草・古代紫・臙脂(えんじ)の5色を指しており、この5色をベースに1つの色をぼかしたり、複数の色を混ぜたりして繊細な色彩表現を実現しています。それぞれの色に深みがあり、豪奢かつ優雅な意匠になりやすいのが魅力です。

絵柄は写実性を重視しており、葉や花びらの形がとてもリアル。中心を淡く、外側を濃く着色する「先ぼかし」という技法を取り入れ、立体感のある表現を施しています。あえて虫に食われた箇所も描き、本物に近づけているところも注目です。自然や古典文学を取り入れた絵画のような絵柄が多く、禅金箔や刺繍で装飾される京友禅と比べると、加賀友禅は落ち着きのある武家風のデザインになっています。