図録(ずろく)とは、絵画・彫刻・工芸といった作品の写真をたくさん掲載している書物のことです。身近なものだと、博物館や美術館の展覧会のたびに発行されるものが挙げられます。写真は作品の全体像だけでなく、接近して紋様や装飾がよくわかるように撮影したり、巨大な屏風絵を見開き2ページで載せたりする場合もあります。作品を細部まで観察できるのが、図録の魅力の1つです。
図録のなかにはすべての作品に対する基本情報と説明文を掲載しているものや、展覧会のテーマの専門家が執筆した論文を載せているものもあります。図録は後日展覧会の内容を振り返ったり、作品に対する理解を深めたりするのにも役立ちます。
画集との違いは、展覧会に合わせて作られたかどうかです。図録は展覧会に出品してある作品を取り上げているのに対し、画集は特定の作家や芸術運動に該当する作品のみを掲載しているものが多い傾向にあります。ただし美術館が特定の作家や芸術運動をテーマにした展覧会を開催する場合もあるため、完全に分類するのが難しいのが現状です。
古い図録の買取り・販売は、主に古書店で実施しています。図録のなかには現在は破損・消失してしまい、本物を見ることが叶わない作品を掲載しているものもあります。また研究者が研究テーマにしている事柄を専門的に扱った展覧会が最近開催されておらず、調査手法の1つとして図録の確認が含まれることもあるのです。古い図録にも一定数の需要があるため、古書店と図録所有者のやり取りは現在も続いています。