波佐見焼とは、長崎県東彼杵郡波佐見町とその周辺で生産されている陶磁器のことです。波佐見焼の代表的な製品は、筆でシンプルな唐草模様を描いた「くわらんか碗」。耐久性に優れるだけでなく、分業制による大量生産を実現しており、庶民にとって焼き物が身近な存在になるきっかけを作ったとも考えられています。
波佐見焼は江戸時代ごろから生産が始まっており、400年を超える歴史があるとされています。江戸時代後期には、染付磁器の生産量が日本トップクラスでした。日本が開国して海外との交易が盛んになると、醤油や日本酒を輸出するときに使用する「コンプラ瓶」の生産も手掛けます。しかし波佐見焼は、現在は焼きもの好き以外にはあまり知られていない存在になっています。
波佐見焼があまり知られていない理由として、江戸時代以降、有田焼の下請けをしていたことが考えられています。波佐見町などで生産された焼き物も、かつては有田焼の名称で販売されていました。しかし2000年代に地域ブランド表示が厳格化され、波佐見町とその周辺で作られた焼き物は波佐見焼と表記することに。ここから波佐見焼は、陶磁器の産地として再スタートを切ることになりました。
現在は地域一丸となって江戸時代の波佐見焼に立ち返り、現代のライフスタイルに合ったお手頃な日用食器を生産しています。1779年創業の白山陶器をはじめ、日常使いしやすい食器をデザインし、グッドデザイン賞を何度も受賞してきました。全国展開している雑貨店に製品が置かれることもあり、身近な存在になりつつある陶磁器です。