紙本

紙本(しほん)とは、書・絵画・文書などを作る際に使用する紙のことです。また、紙に描かれた絵画作品や書の作品を指すこともあります。紙にはコピー用紙やわら半紙など様々な種類がありますが、紙本で使用するのは和紙がほとんど。紙の厚さによって描き心地は異なり、薄いものほど墨や絵の具が滲みやすく、厚いものほど滲みにくくなります。和紙は筆をスッと滑らかに動かしやすいのが特徴の1つで、日本画などの絵画作品には欠かせない紙です。

紙本の作品は、使用している塗料の種類に合わせて「紙本○○」と呼び分けるケースがよくあります。墨で描いている作品は「紙本墨画」、絵の具を用いて描いている作品は「紙本著色(しほんちゃくしょく)」などと呼びます。作品名や解説文に記載してある「紙本○○」を確認すると、その作品は紙に描かれており、どのような塗料を使って制作したのか大まかに把握することが可能です。

紙本で作品を制作する際は、絵の具を滲みにくくするために、あらかじめ「礬砂(どうさ)」という液体を表面に塗っておきます。紙は古代中国で生まれ、昔から政治の記録や絵画作品の制作などを目的に使われていました。日本には7世紀前半に製紙法が伝来したと伝わっており、平安時代以降は紙本の作品がたくさん登場します。

国宝に登録されている五島美術館所蔵の『源氏物語絵巻』は、12世紀に成立した作品です。紙に鈴虫・夕霧・御法の三帖分の場面を描いています。ほかにも国宝の『紙本著色後鳥羽天皇像』や、雪舟が描いた『紙本墨画秋冬山水図』など、優れた紙本の作品が数多く現存しています。