蒔絵

蒔絵(まきえ)とは、金粉や銀粉などを使って漆工芸を装飾する技法です。漆塗りを施した面の上に、さらに漆で文様や文字を描き、その漆が乾かないうちに金属粉を振りかけて(専門的には「蒔く」と表現)接着させます。接着の方法にもさまざまな種類があり、平蒔絵・研出蒔絵・高蒔絵の、大きく3つに分類することが可能です。

平蒔絵は、金属粉を振りかけた文様の上だけに漆を重ね、乾いたら文様部分を磨き上げる技法です。文様部分を磨いた後は、器全体を胴摺りやツヤ上げといった工程で磨き上げたり、擦漆の工程で金属粉を器に固定したりします。器全体を一体化させるような手順が含まれていないため、文様部分が少し盛り上がって見えるのが特徴です。

研出蒔絵では、金属粉を振りかけた上に黒漆や透明度の高い透漆を器全体に塗り、いったん模様も見えなくしてしまいます。乾燥したら金属の模様が出てくるまで木炭で研ぎ出し、ツヤ感が出るまでひたすら磨き続ける技法です。表面がデコボコにならないよう、模様以外の部分も磨く分手間がかかりますが、器の表面が一体化するため、金属粉が落ちにくくなります。

高蒔絵とは、絵柄を描きたい場所に炭や鉱物を混ぜた粘度の高い漆を塗り、その上から漆と金属粉を重ねる技法です。最後に、文様部分にはさらに漆を重ねるため、重厚感のある見た目になります。鎌倉時代に開発された技法で、平蒔絵よりも文様を立体的に見せられるため、ゴツゴツとした岩石や樹木を表現するときによく使われました。