透明水彩とは、水で溶かすことで透明感のある色を表現できる絵の具のことです。色を重ねると下の色が透けて見えるのが特徴で、植物や風景を描いたり、奥行きや柔らかい印象を表現したりするときによく用いられます。画用紙などの紙の色を透かして絵の表現に活かすことができるのも、透明水彩の特色です。
透明水彩と同様に水彩画で使われる絵の具に、不透明水彩(ガッシュ)というものがあります。透明水彩と不透明水彩は、絵の具に使われる顔料とアラビアゴムの配合比が異なり、透明水彩の方が顔料の比率が少なく、透き通った色を作りやすくなっています。絵を描くときは、透明水彩は水のようにサラサラになるまで溶くのに対し、不透明水彩は少ない水でクリーム状になるように溶くのも違いのひとつです。
透明水彩は、絵の具を溶く水の量や色の重ね方によって、さまざまな表現ができます。作品を制作するときは、明るさを表現したい部分を残しながら計画的に色を塗ることが大切です。しかし色を塗り間違えた場合、透明水彩は下の色が透けてしまうため、重ね塗りで修正するのが難しいのが難点として挙げられます。
透明水彩を用いた作品を制作した画家としてよく知られているのが、ドイツの画家であるアルブレヒト・デューラーです。1502年に描かれた「野うさぎ」と1503年の「芝草」は、透明水彩と不透明水彩で制作されており、水彩画の歴史を語るうえで欠かせない存在になっています。また現代の透明水彩画家としては、渋谷たつお、醍醐芳晴、藤田和平などが挙げられます。