もの派

もの派とは、1960年代末~1970年代中頃に日本で興った現代美術の動向の1つです。キャンバスや紙に絵を描くのではなく、石・綿・鉄材・木材などの素材を使用し、新しい芸術作品を制作するのが特徴。素材を加工することはほとんどなく、可能な限りそのままの状態で展示することで、「もの」自体に語らせようとしました。

「もの派」と命名した人物は不明で、誰からともなく使われるようになったとされています。もの派の源となる芸術の研究を始めたのは、関根伸夫と李禹煥です。もの派の代表作として挙げられる『位相—大地』は、関根伸夫が制作しました。地面に掘った穴と同じ高さ、同じ直径の円柱の型を土で作っており、もの派の原点だとも言われています。

次いで関根の後輩である吉田克朗や本田眞吾なども参加し、もの派の芸術家が作品を発表する機会が増加します。1970年にもの派の「李+多摩美系」の人物が美術誌の座談会で揃いましたが、同年の夏にはそれぞれの作風に離散し、活動期間中にもの派の企画展を開催することはありませんでした。

1986年にパリのポンピドゥーセンターの展覧会で紹介され、これ以降世界的に評価されるようになりました。同時代に海外で流行したアルテ・ポーヴェラやアンチ・フォームといった芸術動向との関連性の研究も進められています。ただし、もの派は同時期に活動していた具体美術協会とは異なり、グループや団体を形成したわけではなかったため、誰がもの派の芸術家なのか定義するのが難しいのが現状です。