アラ・プリマ

アラ・プリマとは、油絵具が乾ききる前に絵を描き上げる技法のことです。イタリア語で「1回で」「一度に」という意味があることから、「1回で仕上げる」「勢いに合わせて一気に制作する」というニュアンスで使われています。「ウェット・オン・ウェット」や「ダイレクト・ペインティング」と呼ばれることもあります。

アラ・プリマで制作された作品の特徴は、即興性があることです。伝統的な油絵の技法では、画材の特性や性質を理解したうえで使いこなしており、作品からは計画性を感じられるのに対し、アラ・プリマには感情や感覚をそのままキャンバスに反映させたような勢いがあります。絵の具を乾かす工程がないため、油絵のなかでは比較的短時間で完成させられるのもアラ・プリマの特色です。

アラ・プリマは短時間で作品を完成させるため、感情や感覚を表現するには、あらかじめ伝統的な油絵を学び、材料や素材について熟知しておく必要があります。画材の使い方や油絵の描き方をよく知っている画家が短時間で制作するからこそ生まれる「未完成さ」も、アラ・プリマの魅力のひとつです。

絵の一部をアラ・プリマで勢いよく描き、他の箇所は伝統的な技法でじっくり描き込むことで、表現にメリハリをつけることも可能です。アラ・プリマの作品を制作した画家としては、17世紀にかけてオランダで活躍したフランス・ハルスが挙げられます。代表作は、『陽気な酒飲み』や『1616年の聖ゲオルギウス市民警備隊士官の宴会』です。