アルカイック・スマイル

アルカイック・スマイルとは、顔の感情表面はできる限り抑え、口元にのみ微笑を浮かべた表情のことです。古代ギリシアのアルカイック美術の彫像によく見られることから、「アルカイック・スマイル」の名称が付きました。古代ギリシア期全体を通じてアルカイック・スマイルを浮かべた作品が制作されており、特に多いのは紀元前5世紀から2世紀ほど遡った期間です。ギリシアだけにとどまらず、エーゲ海の広い範囲でアルカイック・スマイルの彫刻作品が見つかっています。

アルカイック・スマイルは、幸福感や生き生きとした生命感を表現するために生まれた表情だと考えられています。アテネ国立考古博物館に所蔵されている「クーロス像」は、その典型例です。ただし、アルカイック・スマイルは必ずしも幸福感や生命感を表すわけではありません。数ある作品のなかには、アルカイック・スマイルを浮かべた、瀕死の兵士や競技をする青年の彫像もあります。

アルカイック・スマイルは、日本の仏像でも確認することができます。日本でアルカイック・スマイルを浮かべた作品がよく見られる時代は、飛鳥時代です。代表例として、京都の広隆寺に安置されている弥勒菩薩半跏思惟像が挙げられます。

海外の芸術作品にもアルカイック・スマイルは取り入れられており、ルーブル美術館が所蔵している『モナ・リザ』の表情も、アルカイック・スマイルを浮かべているのだとか。アルカイック・スマイルは、美しさとミステリアスな雰囲気を兼ね備えた、神秘的な表情とも言えます。