アルビュメン・プリント

アルビュメン・プリントとは、フランスの写真家ルイ・デジレ・ブランカール・エブラールが、1850年に開発した印刷紙のことです。卵白と塩化アンモニウムを混ぜた溶液に紙を浸し、一度乾燥させてから光に反応する性質を持つ硝酸銀水溶液を塗って作ります。フランス人化学者のクロード・フェリクス・アベル・ニエプス・ド・サン=ヴィクトールが開発した「卵白コロディオン法」を発展させて生まれた印刷紙で、1日に数百枚の写真を焼き付けることもできました。

アルビュメン・プリントを使った写真はうっすらと茶色がかったセピア調の色合いで、柔らかい雰囲気を表現できます。鶏卵でできた表層膜が画像を空気から守る役割を担っており、紙が少々薄いため裏を台紙で補強して鑑賞するのが一般的でした。従来の印刷紙よりも色のコントラストをはっきりと表現できるため、19世紀までは写真作品の制作以外の場面でも使われていたようです。しかし、プリントするたびに印刷紙を作る手間がかかっていたため、保存性を持つ印刷紙の登場に伴い衰退。現在は、アルビュメン・プリント独特のセピア調の発色を活かした写真作品に使われています。

日本においても、アルビュメン・プリントは写真館を中心に広く普及しました。手作業で彩色を施すと疑似的なカラー写真にもなるため、1980年代初頭までは盛んに作られていたようです。それ以降は、扱いが簡単で耐久性も備えている別の印刷紙・印刷法が用いられています。