エンカウスティーク

エンカウスティークとは、蜜蝋を使用した絵画技法のことです。「エンカウスティーク」はドイツ語の名称。日本語では「蝋画」と訳すほか、英語で「エンコスティック」、フランス語で「アンコスティック」と呼ぶこともあります。

文献や遺物をもとにした分析から2,000年以上前の古代ローマの時代には存在していたと考えられており、「美術史上最古の絵画技法」と称されることも。エジプトの聖カタリナ修道院には6世紀ごろに描かれたエンカウスティークが美しい彩色を保ったまま現存しており、耐光性や耐酸性などに優れているのが伺えます。

エンカウスティークを使用した作品を制作するときは、絵の具づくりから始めます。蜜蝋をトロトロに溶かした後顔料を混ぜ、固形の蝋絵の具を作るのです。固形化させた蝋絵の具を再度溶かし、画面に絵を描いていきます。近年は蝋絵の具の密着性を高め、剝離を防ぐために「ダンマル樹脂」を加える場合もあります。

歴史あるエンカウスティークの技法は現代アートにも頻繁に用いられます。エンカウスティークを使用する代表的な現代アーティストは、アメリカのジャスパー・ジョーンズや日本の赤木範陸など。ジャスパー・ジョーンズはアメリカ陸軍に在籍していた経験があり、作品にも星条旗や的が登場するのが特徴です。代表作として、『旗』『ホワイトフラッグ』『白色の数字』などが挙げられます。

赤木範陸はエンカウスティーク技法の技術改良を行い、蜜蝋による陰影を活かした作品を制作しているのが特色。代表作は『瓊血』です。