カメオガラス

カメオガラスとは、文様をレリーフのような浮き彫りで施したガラス工芸です。歴史は古代ローマ時代にまでさかのぼります。1810年にポートランド公爵が大英博物館に貸し出した古代ローマ時代の遺物「ポートランドの壺」が称賛を浴びたことをきっかけに、イギリスをはじめヨーロッパ各地で注目されました。イギリスのJ&Jノースウッド社はポートランドの壺の再現に注力するほか、トーマス・ウェッブ・アンド・サンズ社なども参入し、数多くのカメオ・ガラスが誕生します。

カメオ・ガラスを制作する際は、ガラス種に1層以上のガラス層をコーティングします。多いものだと、異なる色の色ガラスを4層重ねるものも。成形や装飾の過程で彫りやカットを施して文様を作っていきます。部分的にガラス層を取り除くと、繊細なグラデーションを表現することも可能。完成した作品の表面を指でなぞると、彫り物のような浅い凹凸を感じられるのが特徴です。

芸術家からもカメオ・ガラスの作品を制作する者が現れ、フランスのエミール・ガレはその代表例です。ガレは、草花や動物といった自然界のものを自身の作品に取り入れました。ガラスでできたパーツを本体にはめ込む「マルケトリ」、ガラスの表面をあえて濁らせる「パチネ」など、独特の技法を用いた作品を残しているのが特徴です。ガレ・スタイルのカメオ・ガラスは贋作も多く、見分ける際は注意が必要。ガレが亡くなった1904年から1914年にかけて作られた真正品は彼への敬意を表すため、サインの横に星マークをあしらっています。