クイーン・アン様式とは、18世紀前半のイギリスで流行した建築と家具の様式のことです。由来は、当時イギリスを統治していたアン女王。建築分野では、左右対称の外観と赤レンガを使用した壁、三角形の小屋根が特徴です。左右対称の外観は、クイーン・アン様式より前に流行したウィリアム&メアリ様式でも好まれていました。
家具分野では、美しい見た目と使いやすさを両立したものが多いのが特徴です。アン女王がイギリスを統治していた時代、イングランドとスコットランドが合併して国全体が発展したことで人々の生活水準が上昇したのが、デザイン性と機能性を兼ね備える家具が登場した背景にあると考えられています。
クイーン・アン様式の家具のなかでも特に特徴的なのが、椅子です。背もたれや脚は曲線を描いたものが多く、エレガントな印象を与えるものがよく見られます。座幕板や脚に、ホタテ貝の貝殻をモチーフにした彫刻を施したものが多いのも特色のひとつです。機能面では座面にクッションを取り入れ、座り心地を改善しました。
建物に高さが大きい窓が用いられるようになったことを受け、背が高い家具が登場したのもクイーン・アン様式の特徴のひとつ。キャビネットやカップボードの上部には「ペディメンド」という三角形に盛り上がるようなデザインが取り入れられ、従来の家具よりも華やかなものが作られました。素材は高品質なものを用い、長く使えるようにしているのも特色です。