クリニャンクール磁器

クリニャンクール磁器とは、パリの北部に位置するクリニャンクールという場所で生産されていた磁器のことです。1767年に、建築家であるピエール・ドゥリュエルが設立、もしくは既に存在した他の磁器窯を購入して創設されたと考えられています。創業当時は、モンマルトルのクリニャンクール通り沿いに存在しました。

1775年には、当時の国王の弟で、のちにルイ18世として即位するルイ・スタニスラス・ザビエの保護下に置かれました。1790年になると、創設者のピエール・ドゥリュエルの義理の息子に経営権が譲渡されます。具体的な活動内容はあまり明らかになっていませんが、1791年にクリニャンクール磁器と関わりのある建物が売却されたときには、生産が停止していたと考えられています。

クリニャンクール磁器の品質はとても優れていることで知られ、フランスを代表する磁器である「セーブル磁器」にも劣らないとされています。元々のシンボルマークは、モンマルトルのシンボルである風車でしたが、1775年に「LSX」に変更されました。クリニャンクール磁器の製品は現在も残っており、なかにはアメリカのメトロポリタン美術館に収蔵されているものもあります。

クリニャンクール磁器の特徴は、優雅な装飾のデザインです。フランス王家と関わりがあったためか、ピンクやオレンジを用いた彩色や、金彩を施したものなど、華やかな磁器がいくつも現存しています。なかには側面に風景画を描いた花瓶もあり、豪華な宮殿に馴染む意匠がよく見られます。