グリザイユ

グリザイユとは、黒から白への濃淡で明暗や陰影を表現する絵画技法のことです。また、モノクロームで描かれた絵画を指す場合もあります。油絵を制作する際の下地の役割を担うこともあり、グリザイユ技法でアンダーペインティングをすることで明暗をはっきりさせたり、着色をスムーズにしたりする効果があります。

グリザイユはもともと、灰色の単色で描かれた作品を指していました。当初は金銭や設置場所の都合で彫刻作品の入手が難しい人に向けた絵画作品として、壁に描くこともあったとされています。次第にキャンパスやパネルに描いたり、彩色を施したりもするようになり、現在のような絵画技法や油絵のアンダーペインティングとしても用いられるようになりました。

油絵でグリザイユを描く方法はさまざまで、対象物の輪郭を取ってから影が落ちる箇所や色が濃い部分に陰影を付けたり、キャンパスや画用紙を黒で塗りつぶした有色下地にして黒や白で着色したりする方法があります。共通しているのは、黒や白以外の色で着色するのは、モノクロームの絵が完成してからである点です。

グリザイユの技法はルネッサンスの時代から用いられており、システィーナ礼拝堂の天井のフレスコ画、ヤン・ファン・エイクが制作した『ヘントの祭壇画』、イタリア人画家のジョットが描いたスクロヴェーニ礼拝堂のフレスコ画、などが代表例として挙げられます。近年、グリザイユの技法は油絵のほか、水彩画やデジタルアートにも用いられています。