コロタイプ

コロタイプとは、写真印刷法の一種です。実用化された写真印刷法のなかでは特に古い技法で、かつては絵葉書やアルバムなどの制作に広く使われていました。現在は文化財や絵画の複製のような特別な場面で活用されています。コロタイプの技術はフランスで生まれ、のちにドイツのヨーゼフ・アルバートによって実用化にまで至りました。

日本ではボストンでコロタイプを学んだ小川一真が、帰国後の19世紀後半に新橋に工場を建てたのが始まりです。日露戦争のときにコロタイプと石板を組み合わせて印刷した絵葉書が人気になり、印刷技術の1つとして広く使われるようになりました。

コロタイプで写真を印刷する際は、下準備として厚手のガラス板にゼラチンや感光液を塗り、乾燥させて視認できないほど小さなシワをいくつも作ります。そこに写真ネガをあてて露光すると、光が当たった部分のゼラチンだけが硬化して水を弾くようになります。

インクを塗ると硬化しなかった部分はインクを吸い込み、硬化した部分にのみインクが残るため、写真の画面を用紙に写すことが可能。現在のインクジェット写真のように網点(ドット)ではなく、絵の具を塗ったような滑らかな濃淡を実現できるのが特徴です。

完成したコロタイプの作品はとても美しいのですが、カラーでの印刷が難しいうえ耐久性が低く、効率があまりよくないため現在は特別な場面以外ではほとんど使われていません。近年では、1949年に焼損した法隆寺の金堂壁画の複製を制作する際に活用されました。