サンカローク窯とは、かつて陶磁器の生産を行っていた窯跡のことです。タイ北部に位置する、スコータイ県のシーサッチャナーライという場所にあります。窯跡からは陶磁器の生産に使われたとされる窯が200件以上見つかっており、タイにおける陶磁器の一大産地であったことが伺えます。
サンカローク窯で陶磁器が盛んに生産されていたのは、13世紀中ごろから15世紀中ごろまで続いたスコータイ王朝の時代です。サンカローク窯で作った陶磁器は、日本・インドネシア・フィリピンなどのアジア各地に輸出されていました。日本では桃山時代から知られており、「宋胡禄(そんころく)」「寸胡録(すんころく)」などと呼ばれていました。
青磁が特徴的で、白土で作った陶土に光沢と透明感のある青磁釉を使用します。柔らかい色合いのセルリアンブルーや、深みのあるネイビーなど、青を用いた彩色が美しいのが魅力です。青磁釉を使用したもの以外にも、釉薬が使われていないものや、クメール王朝に支配されていた時代の流れを汲んだ黒や褐色の黒釉薬を使用したものも見つかっています。文様は、鉄分を含む顔料で黒く絵付けする「鉄絵」という技法がよく用いられています。
現在は「サンカローク窯跡・研究・保存センター」が設置され、42番の窯跡を建物で覆い、周辺の窯跡の保存や、発見された陶磁器の破片の展示などを行っています。ほかにも「サンカローク焼博物館61番窯」で、61番の窯跡が展示されています。