セーブル磁器

セーブル磁器とは、フランスで生産している陶磁器のことです。主に皿やコーヒーカップなどの食器類を作っています。時代ごとの潮流や流行を反映させた、芸術的な作品を残しているのが特色です。ドイツのマイセンやオーストリアのウィーンなど、ヨーロッパ各地で陶磁器の製作に成功したことを受け、1741年にデュボア兄弟がパリ東部のヴァンセンヌで工房を創設しました。

創設当初はあまり評価が高くなかったのですが、技術向上により品質も上がり、貴族からの注目を集めるようになります。デュボア兄弟の陶磁器の名声は宮殿まで届き、1751年にルイ15世の公妾であるポンパドゥール夫人の進言により、公的に保護されました。1756年には拠点をポンパドゥール夫人が住んでいる城に近いセーブルという町に移転。1759年に「王立セーブル製陶所」と改名し、さらなる技術発展と品質向上を目指します。

マイセン窯をはじめとしたヨーロッパの窯は東洋の陶磁器を再現することに注力していましたが、セーブルはフランス発のロココ様式にこだわって生産を続けました。レースを編んだような華やかなブーケ柄や、ロココ美術の画家であるフランソワ・ブーシェの作風を取り入れたものがその代表例です。

フランス革命により一度閉窯する事態にも陥りましたが、ナポレオン1世が復活させ、現在に至るまで様々な作品を残しています。セーブル磁器の魅力は、豊かな青色の表現。特にクラウデッド・ブルー、ファット・ブルー、アガサ・ブルーの3つは伝統があり、芸術性も高いシリーズとして根強い人気を誇っています。