タペストリー

タペストリーとは、壁掛け等として使われる、室内装飾用の織物のことです。タペストリーの歴史は古く、紀元前のヘレニズム時代から存在していたと考えられています。ヨーロッパでタペストリーが登場したきっかけは、11世紀ごろに東方からの交易品として手織りの絨毯が伝来したこと。「美しい絨毯を足で踏むのはもったいないから」と壁掛けにしたところ、室内装飾の効果だけでなく、壁のすき間を防いで部屋の保温効果もあったため、需要が一気に拡大しました。

ヨーロッパでタペストリーの生産を初期に始めたのは、ドイツとスイスです。その後、フランス、ベルギー、オランダなどに産地が拡大していきました。特に14~15世紀かけてはフランスのアラスがタペストリーの一大産地となり、ヨーロッパ各地の王宮へと最上級の作品を贈りました。しかしフランス革命の際にアラスで作られたタペストリーの大半が焼かれ、今では当時の品がほとんど現存していません。現在、「アラス」という言葉は、産地を問わず優れたタペストリーを指す言葉として使われています。

現存する有名なタペストリーとして挙げられるのは、フランスのアンジェ城が所蔵している『アンジェの黙示録』、パリのクリュニー美術館所蔵の『貴婦人と一角獣』、日本の祇園祭と長浜曳山まつりの曳山の装飾品などです。祇園祭と長浜曳山で使うタペストリーは、もともと1枚の作品だったものを江戸時代の職人が分割し、貼り合わせたもの。16~17世紀ごろに、ブリュッセルで作られました。