ドライブラシ

ドライブラシとは、乾いた筆に絵の具を少しだけ付けて、絵を制作する技法のことです。乾いた筆に少しだけ絵の具を取り、余分な絵の具をぬぐってから絵を描きます。16世紀から17世紀にかけてヨーロッパの絵画で使われ始め、バロック時代になるとレンブラントやカラヴァッジョをはじめ多くの画家が用いました。

ドライブラシで絵を描くと、筆跡が分かりやすくなったり、シャープな線を描きやすくなったりします。物体の質感、光の反射、対象物のディテールなど、繊細な表現をするときによく用いられます。目が粗いキャンバスや木材の上にドライブラシで絵を描くと、素材の質感を強調し、より印象的な絵を制作することが可能です。

ドライブラシが広く知られるようになったのは、20世紀になってからです。アメリカの画家であるアンドリュー・ワイエスが、ドライブラシを用いた水彩画を残したため、現在では一般的な技法にまで普及したと考えられています。アンドリュー・ワイエスは、古い木造家屋の壁や雪景色ならではのザラザラとした質感を、ドライブラシで表現しました。

ドライブラシを用いた代表的な作品としては、アンドリュー・ワイエスの『クリスティーナの世界』や『最初の雪』などが挙げられます。東洋では、日本や中国の水墨画で、西洋のドライブラシに相当するかすれた筆致が使われてきました。近年はアクリル絵画や油絵に加え、デジタルアートにも使われており、ドライブラシの表現の幅が広がっています。