ドライポイント

ドライポイントとは、凹版技法の一種です。「ニードル」という道具を使って、鋼鉄製の堅い板に線を刻み込んで作ります。ドライポイントの歴史は古く、一説によると15世紀後半にドイツで制作されたものが最古の作品とも言われています。類似する技法にエングレーヴィングがありますが、ドライポイントの方が専門的な技術は要さず、イメージ通りの線を描きやすいのが特徴です。

ニードルを使って版板に描画すると、線の両端には「バー(バール)」というまくれができます。エングレーヴィングの場合はバーをきれいに削り取るのですが、ドライポイントではそのまま残しておくのが一般的。バーを残しておくことで、バーの裏側にまでインクが溜まり、印刷した作品には滲みがある柔らかい線や点を表現できます。

ドライポイントにおけるバーの修正は比較的簡単で、「スクレーパー」で削って「バニッシャー」で磨くとすぐに修正することが可能です。簡易的に調整するときは、耐水ペーパーも使えます。

ドライポイントの難点は、1枚の版板で少量しか印刷できないところ。何度も印刷していくうちにバーが磨滅してしまうため、表面に加工を施して版板を傷みにくくしても、50枚前後が印刷量の目安になります。

ドライポイントを用いた作品の例は、ジャン=フランソワ・ラファエリが描いた『自画像』や、ジョージ・エルバート・バーの『アリゾナの蜃気楼』など。ほかにもメアリー・カサットが描いた『沐浴する女性』のような、アクアチントという技法を組み合わせた作品もあります。