ドレスデン・クリスタルとは、ドイツ東部にある古都ドレスデンで生産されているガラス製品のことです。ドレスデンは「エルベ川のフィレンツェ」と称されるほど美しい街並みが残っており、古くから文化活動が盛んに行われてきました。クリスタル以外に、木彫りミニチュアや陶磁器などさまざまな工芸品が生産されています。
ドレスデンでは、ガラス作りが14~15世紀ごろには始まっていたという記録が残っています。かつては神聖ローマ帝国のザクセン国の領地で、現在のドイツ中央部に位置するテューリンゲンの森周辺で生産を開始したガラスが、ドレスデン・クリスタルの起源とされています。その後500年以上にわたり、伝統的な職人の技術が受け継がれてきました。
ドレスデン・クリスタルの特徴は、精巧な装飾です。ロココ様式を思わせる、繊細かつ優美なカットを施した製品が多く登場しています。バラをイメージした文様、北ボヘミアのガラスと似ている幾何学的なカット、華やかさを添える色かぶせガラスなどが魅力です。材質は、鉛分24%を含むクリスタル素地を使用しています。
シャープなカットと、柔らかさを感じるシルエットやデザインも特長で、風格を感じる見た目からヨーロッパの王侯貴族からの注目も集めていました。ドレスデン・クリスタルの代表的な製品は、白ワイングラス、グラスに脚と土台が付いている「ゴブレット」、シャンパングラスなどの酒器が中心です。ほかにも、花瓶のような日用品も生産されています。