ドール

ドールとは、玩具や祭礼、観賞用などに使用される人形の総称です。この項目では、特にヨーロッパで製造された観賞用の人形について解説します。ヨーロッパ製のドールの特徴は、ヘッドとボディには「ビスク」と呼ばれる淡色の磁器を使用し、自然な肌色を表しているところ。ドイツのテューリンゲンという地域で初めて製造され、1840年代から1890年代にかけてヨーロッパ各地に広まりました。

1860年以降はフランス製のドールの人気も高まります。特に好評を得たのは、おしゃれな洋服を着せた「ファッション・ドール」と、赤ちゃんをイメージした「ベベ・ドール」です。どちらもはっきりとした顔立ちと、宮廷のドレスを思わせる華やかな衣服が特色。ジュモー工房やブリュ社、メゾン・ユレなどが制作したドールは、高級品として重宝されました。

安価で入手しやすかったドイツ製のドールは、一般の民衆にまで普及します。ドイツの主要なドールメーカーは、ゲブリューダー・ホイバッハと、ジモン&ハルビックです。ゲブリューダー・ホイバッハはドールの流行当初に製造を開始し、地元の美術学校出身の芸術家とリアリティあるドールを製作。ジモン&ハルビックは1870年代にドールを作り始め、大量生産に力を入れました。

ドイツ製でよく売れたドールのタイプは、ファッション・ドールとベベ・ドールに加えて、目がグリグリと動く「グーグリー」の3種類です。ファッション・ドールのフランス製とドイツ製の違いは、ウエストのライン。ドイツ製のドールの方が、ウエストが細い傾向にあります。またドイツのベベ・ドールは、リアルさとキャラクター性を併せ持っているのが特徴です。