バッチャン焼きとは、ベトナムの首都ハノイから13kmほど離れた場所にある、バッチャン村で生産されている陶器のことです。村の近くに流れるホン川によって運ばれる粘土を使い、14世紀ごろから製陶が始まりました。現在も村の住民のほとんどが製陶に携わっており、500年以上の歴史がある陶器です。
バッチャン焼きは生産が始まった当初から、明朝(14世紀後半~17世紀後半まで存在した中国の王朝)の影響を受けながら発達します。日本にも輸出しており、茶の湯が流行していた安土桃山時代には、「安南焼」という名称で親しまれていました。近年は伝統的な陶器だけでなく、電子レンジや食洗器にも対応できる「ニューバッチャン」という新しい陶器も登場しています。
バッチャン焼きの特徴は、耐久性に優れているところです。1,300度の高温で焼成するため耐久性が向上し、一度購入すれば長く使えます。ろくろで成形するのではなく、型に粘土を流し込む製法も、バッチャン焼きの特色のひとつです。完成した陶器の素地は淡いクリーム色のような色合いで、優しい雰囲気を感じられます。
バッチャン焼きの定番のデザインは、トンボ、菊、蓮などです。現代風の柄として、近年はドット柄やしま模様のバッチャン焼きも登場しています。ベトナム料理屋では、赤や青の伝統的な花柄のものがよく用いられています。古くから日本に輸出していたことや、和食器のような重厚感から、日本の食卓で使いやすいものが多いのも魅力のひとつです。