フロッタージュ

フロッタージュとは、凹凸のあるものの上に紙を敷いて、その上からクレパスや鉛筆などの画材でこすり、模様を写し取る技法のことです。フランス語で「こする」を意味する「Frotter」に由来しています。シュルレアリスムの描法の1つです。

写し取りたい物の模様がしっかり浮かび上がるよう、紙は上質紙や和紙などの薄くて破れにくいものを使います。描画材は鉛筆やコンテといった硬めのものを使い、対象物の凹凸をしっかりと写し取るのが特徴です。対象物を紙の上から描画材でこすると、凹部の色は薄く、凸部の色は濃くなります。

作者の意図に合わせてコントロールできない場面が発生するのも、フロッタージュの特色。対象物選びや画面の構図は作家が決められるのですが、どのような濃淡や精度で写し取れるかは偶然性に依るところが大きいのです。突発的に出てきたイメージは鑑賞者の想像力をかき立てる効果があるとして、シュルレアリスムの画家たちはフロッタージュの技法を愛用しました。

フロッタージュを駆使したシュルレアリスムの画家に、マックス・エルンストが挙げられます。一説によると、床板の木目を紙の上から黒鉛で写し取り、絵画制作の着想を得たことからフロッタージュは誕生したとのこと。『葉の習作』と『博物誌』は、エルンストがフロッタージュを用いた代表的な作品です。現代美術では油彩画をはじめ、紙や鉛筆以外の様々な素材を使った多様な作品が登場しています。