ベレン人形とは、新約聖書に記されているキリスト降誕の場面を表現した人形のことです。主にスペインで、クリスマスの伝統的な装飾品として用いられています。イエス・キリストが生まれた町である「ベツレヘム」がスペイン語の発音になり、「ベレン」と呼ばれるようになりました。一部はポルトガルでも生産されています。
ベレン人形が表現しているキリスト降誕のシーンは、マリアとヨセフと生まれたばかりのイエスがセットになったものがよく見られます。大きなものだと、イエス・キリストの生誕を祝う品を持ってきた三賢人、イエス・キリストの生誕を喜ぶ天使、イエス・キリストが家畜小屋で生まれたことにちなんで牛や馬などが加わることもあります。
手のひらに収まる小さなサイズから、大掛かりなジオラマのようなものまで、ベレン人形の大きさはさまざまです。近年はチョコレートで作ったものや等身大の人形、人間がベレン人形に扮したものも登場しています。クリスマスはイエス・キリストの降誕祭のため、キリスト教を信仰する人も多いスペインでは、ベレン人形は重要な役割を担っています。
ベレン人形は18世紀に作られたものも現存しており、古くからスペインの人々に親しまれていたと考えられます。昔は木材や粘土、素焼きの焼き物、彫刻などで表現されていました。マドリードにある王宮やムルシアのサルシージョ美術館、バジャドリの国立彫刻美術館などでは、貴重なベレン人形の展示も行われています。