ボウ磁器工房は、かつてイギリスに存在した磁器工房のことです。ロンドンの東側にあるボウという場所で、1740年代に創業しました。1748年には、トーマス・フライという人物がファイン・ボーン・チャイナを開発。ヨーロッパでは最初期の、ファイン・ボーン・チャイナの開発であると考えられています。
1749年から1750年にかけて、ボウ磁器工房の事業は「ニューカントン」に移転します。1758年頃には最盛期を迎え、300人が雇用されていました。一時期はロンドンの中心部に小売店や倉庫を持っていましたが、その後は財政状況が悪化して、1764年には工房の所有者の財産は分割されました。1776年にボウ磁器工房の残っていた部分が売却され、鋳型や器具が移されたことで閉業したとされています。
ボウ磁器工房の磁器の特徴は、温かみのあるクリーム色の素地です。粘土に骨灰を含み、人形を成形するときは型に押し込んで作られました。とくに初期のボウ磁器工房の製品は、骨灰を含んだ軟質粘土で、その後主流になるファイン・ボーン・チャイナの前身になる素地を作りました。当時の市場では高級品に分類される製品を扱っており、公爵夫人の帳簿にも、ボウ磁器工房に関する記録が残っています。
ファイン・ボーン・チャイナが確立するまで、ヨーロッパでは東洋のものを真似た磁器が多く生産されており、ボウ磁器工房でも、中国陶磁器を模倣した食器や、日本の柿右衛門様式の磁器をもとにした作品が作られています。プレートやマグカップ等の食器類のほか、磁器でできた人形も生産していました。

