ボヘミアンガラス

ボヘミアンガラスとは、チェコで生産されているガラス工芸品です。特徴は水晶のような透明感と硬さで、代表的なブランドとして「モーゼル」が挙げられます。もともとは教会のステンドグラスとして使うためにガラスを生産していましたが、13世紀になると一般向けのガラス容器も作るようになりました。

14世紀に入り、カール4世の時代になるとベネチアングラスを手本にしたガラス作りが始まります。16世紀末になると、ガラス産業を熱心に保護したルドルフ2世が即位。ボヘミアンガラスもその恩恵を受け、宝石のカッティング技法をガラス工芸に応用するようになります。ガラスの表面に後から絵を描くのではなく、本体に直接図柄を刷り込む方法は当時のヨーロッパでも珍重され、ハプスブルク家をはじめとしたヨーロッパ中の宮廷で好まれました。

その後戦争の影響で輸出が滞り、一度衰退の危機が訪れますが、19世紀の有色ガラスの開発によりボヘミアンガラスは復活します。有色ガラス開発の先駆者となったのが、現在も根強い人気を誇るモーゼルです。1925年開催のパリ万博に出品した作品は金賞を受賞するなど、高い評価を得ました。

第二次世界大戦後、チェコスロバキアの社会主義化の影響でボヘミアンガラスの産業は国有化されます。重工業を重視した政策の下、活動規模を縮小されて再び危機が訪れました。しかし万博で何度も評価されるうちに、中工業であるにも関わらずガラス産業は国に手厚く保護されるようになります。その後デザインと技術の開発にも力を入れ、現在はワイングラスやロックグラス、香水瓶などが生産されています。