マニセス焼き

マニセス焼きとは、スペイン東部にあるバレンシア州の、マニセスという町で生産されている陶磁器のことです。12世紀から18世紀ごろまではイスラームの影響を受け、イスパノ=モレスク陶器が生産されていました。マニセス焼きの拠点が置ある場所は製陶向けの粘土が豊富で、古代ローマ時代以前から窯業が盛んでした。

ルネサンス期にはイタリアへ多くの作品が輸出され、宮殿の装飾品として好まれました。ほかにもバチカン宮殿の大広間に使用するタイルや、バルト海沿岸諸国など、ヨーロッパ各地で人気を博します。マニセスが属するバレンシア州には地中海貿易の拠点となる港も置かれており、イタリアから来た錫釉陶器が影響を与えるようにもなりました。マニセス焼きはイスラームやヨーロッパなど、各地の影響を受けながら発展した陶磁器とも言えます。

16世紀末から17世紀の間はイスパノ=モレスク陶器の中心的な産地がバルセロナに移ったことが影響して一時衰退しますが、19世紀後半にタイルの生産地として再興。ヨーロッパ向けのタイルの生産と輸出に注力し、新規市場を開拓しました。1914年には陶芸の専門学校も設立され、現在に至るまで陶磁器の産地として活動を続けています。

マニセス焼きの特徴は、黄色と青色の釉薬を使用しているところです。クリーム色がかかった素地に黄色で繊細な文様を描き、青色で大きく植物や動物を描くなど、華やかで異国情緒を感じられるものが多く生産されました。技術はスペイン南部のマラガから持ち込んでおり、マラガで作られるラスター彩陶器と類似する点が多く見られます。