マーブリング

マーブリングとは、水溶液に描画材を落とし入れ、水面上にできた複雑な模様を紙に写し取る技術のことです。マーブリングの技術を使って制作した作品のことを指す場合もあります。水に絵の具を落とすと絵の具は溶けてしまいますが、マーブリングをする際はゴム樹脂の水溶液と水に反発する特性がある描画材を使用するため、複雑な模様が水面に残るのです。水溶液の表面にできた模様を紙で写し取るときは、水面と紙の間に空気が入らないよう、細心の注意を払いながら作業することが求められます。

マーブリングの技法は、15世紀にトルコで生まれたと考えられています。当時は書籍等を装飾するために、マーブリングを施した紙を使用していました。現在もトルコでは「エブル」という名称で、マーブリングの作品が作られています。エブルを制作する際は、水に反発する描画材として顔料と牛の胆汁を混ぜたものを使用するのが一般的。描画材を筆に取り、ゴム樹脂の水溶液に垂らして串などを用いて模様を描いていきます。最後に、紙に模様を写し取って完成です。

フランス・ドイツ・イングランドといったヨーロッパ諸国では、書籍用の紙としてマーブリングを施した18世紀ごろの作品例が確認されています。日本でも、アクリル絵の具・画用紙・水を入れるためのバットなど身近な材料を使って制作できることから、身近なアートとして世代を問わず広く親しまれています。「墨流し」というマーブリングとよく似た伝統技術が日本にはありますが、こちらは主に墨汁と水を使う技法です。