モノタイプ

モノタイプとは、版板に直接絵を描き、その上から紙を乗せて転写する版画技法です。ほかの版画技法と異なる点は、版板を削ったり研磨したりと、複雑な工程を挟まないところ。版板・描画材・紙の材質によって、写し取れる作品の雰囲気や質感が変化するのが特徴です。語源は「ただ一つの」という意味を持つギリシャ語「MONOS(モノス)」。一度印刷すると描画材が薄れたり広がったりして原型を留められなくなるため、1枚の版板からは1つの作品しか制作できません。

モノタイプを制作する際は、ガラス製アクリル・金属板・樹脂など、様々な材質の板を版板として使用できます。描きたいものを一度にすべて描き、1回の印刷で作品を完成させるだけでなく、色や対象物を変えながら何度も同じ工程を繰り返して、色を何層にも重ねた作品を作ることも可能です。描画材を紙に転写する際は、バレンを使用して均一に色を写します。

最も古いモノタイプの作品は、イタリアのジョヴァンニ・ベネデット・カスティリオーネが17世紀に制作したと考えられています。19世紀後半にはフランスのドガやゴーギャンがモノタイプを復活・再評価させ、多くの作品を残しました。特にドガはモノタイプの研究に力を入れ、約450点もの作品を制作したと伝わっています。

20世紀になるとピカソやマティス、近代ではフランク・ステラやジャスパー・ジョーンズなど、大勢の著名な芸術家がモノタイプの作品を制作。現在モノタイプの技法は広く知られており、今も新しい作品が生み出され続けています。