ヤケ

ヤケとは、絵画や版画の紙面に光が当たり、日焼けして変色することです。紙面が日焼けすると色が変色して作品本来の美しさが損なわれるだけでなく、紙そのものの強度を低下させて破損しやすくなってしまいます。紙面が日焼けする主な原因は、日光が含んでいる紫外線と、紙が含んでいる「リグニン」という紙を変色させる成分です。紫外線は日光だけでなく室内用の蛍光灯の光にも含まれているため、絵画や版画を保管する際は十分な注意が求められます。

紙面の変色や劣化を完全に防ぐのは難しいですが、対策をすると進行の速度を遅らせることは可能です。紫外線対策として、作品を保管している部屋には遮光カーテンのような遮光材を使用します。照明も、紫外線を発生させないLEDのものを選ぶと、より変色と劣化を遅らせられます。また、作品を飾る際に使用する額縁に、紫外線カット効果を付与したアクリルガラスを使用するのも1つの手段です。紫外線からのダメージを防ぎながら、作品を鑑賞できる環境を整えましょう。

日に焼けて変色してしまった作品は、程度によっては修復を経てもとの美しさを取り戻せる場合があります。日本画のヤケを修復する際は、「洗い」という工程で焼けた色を落とします。洗いとは、専用の薬品を作品にふりかけ、刷毛で少しずつ汚れを落としていく工程です。墨で描かれた作品なら滲みにくいため、絵の輪郭や色合いはそのまま残し、焼けた色合いだけを落とせます。ヤケが酷くなったら完全に修復するのは難しいため、こまめに作品の様子を観察して適宜修理を依頼していきましょう。