ラスター彩とは、金属光沢が特徴的なイスラーム陶器のことです。9世紀ごろに、現在のイラクで生産法が確立したと考えられています。二度焼きを行い、1回目は900~1,000度、2回目は600~700度で焼き上げるのが基本の作り方です。銀もしくは銅の金属が取り入れられており、金属の光沢をもとにモチーフが描かれています。
9世紀から10世紀にかけてアッバース朝がイスラーム圏を統治していた頃、ラスター彩は多色のものと単色のものが確認できます。多色のラスター彩は1つの陶器に複数の色を使用しており、鮮やかな赤から黄金色、緑まで、さまざまな色が用いられています。植物文様や幾何学文様、縞模様など、同時期の他のイスラーム作品ではあまり見られないデザインなのも特徴です。
単色のラスター彩は多色のラスター彩と置き換わるように登場し、動物や人間を描いた陶器が見られるのが特徴です。多色のラスター彩の特色も受け継ぎ、画面を分割して空白を取り入れながらも、多色のラスター彩で使われた文様を取り入れた作品も存在します。
14世紀になりイスラーム圏がモンゴルの支配を受けるようになると、コバルトブルーやターコイズによるハイライトを用いたラスター彩や、型取りしたものも登場しました。建築物の装飾として使われたのも、同時代のラスター彩の特徴です。しかし18世紀頃には、ラスター彩は生産されなくなりました。
一時期は姿を消したラスター彩でしたが、20世紀以降日本の陶芸家である加藤卓男氏が中心となり、現在は岐阜県多治見市で再現されています。