ヴェネツィア派

ヴェネツィア派とは、ルネサンス期のイタリアのヴェネツィア共和国を中心に活動した美術流派です。色彩表現が豊かで、華やかな雰囲気を持つ作品が多いのが特徴。海が近くて湿気があるヴェネツィアの自然環境を背景に、カンヴァス(帆布)に油彩絵の具で作品を描く方法が好まれていました。ヴェネツィア派とは対照的な流派である、フィレンツェ派と対比しながら語られることもあります。

ヴェネツィア派では、宗教画なのにも関わらず享楽的で世俗的な作品が多く残されています。享楽的な表現ができた理由の1つは、ヴェネツィアの潤沢な富です。当時のヴェネツィアは東方貿易の独占により、「アドリア海の女王」と呼ばれるほどの繁栄を見せていました。貿易によって蓄積した富を用い、芸術家を手厚く庇護できていたのです。またヴェネツィアでは徹底的な政教分離ができており、芸術に対する宗教的な制約が少なかったため、世俗的な表現が認められたと考えられています。

ヴェネツィア派の代表的な画家は、ベリーニやティツィアーノなどが挙げられます。ベリーニは「ヴェネツィア派の祖」とも呼ばれており、風景と人物が調和した風景画を生み出しました。代表作は『嵐(ラ・テンペスタ)』です。ティツィアーノは、最も成功したヴェネツィア派画家の1人。モデルの美しさをしっかり捉えて躍動的な筆致で描く表現力で人気を博しました。『ウルビーノのヴィーナス』や『ダナエ』はティツィアーノの作品の代表例です。