七宝焼

七宝焼とは、金属製の器や壺にガラス質の絵の具で絵を付けた焼物のことです。日本で制作が始まった時期は定かではありませんが、記録の量が増えたことから安土桃山時代までには日本各地で作られていたと推測されています。明治時代に開国して西洋の技術を取り入れるようになると日本の七宝焼の品質は飛躍的に上昇し、ジャポニズムブームの発生に影響を与えるほど世界で評価されるようになりました。

制作工程は、素地作りから始まります。絵付けのしやすさや発色のよさに影響を与えるため、とても重要な工程です。素地づくりでは空気に触れて酸化し、黒ずんだり汚れたりしている部分を取り除きます。表面を凹凸がないようきれいに磨き上げると完了です。次に純銀製の小さな枠組みを素地の表面に配置します。焼成すると枠組みは一番高いところだけが表面に出て、輪郭線のように見えるのが特徴です。

枠組みを立てられたら、それぞれの枠に釉薬をさしていきます。釉薬は色ガラスを砂粒くらいの大きにした粉末状のものを水で溶かして作っており、水分量を調節しながら枠線のなかに色を入れるのです。最後に最高温度が1000℃近くにもなる窯に入れて焼成し、表面を研磨して完成です。

日本における七宝焼の名産地は愛知県名古屋市とあま市。「尾張七宝」の名称で経済産業省指定の伝統工芸品にも登録されています。海外でも西欧や中近東、中国など各地で生産されており、コンスタンティノープルの聖遺物や明朝の大型の器などが残されています。七宝焼は古くから世界で広く親しまれてきた焼き物なのです。