京繍

京繍(きょうぬい)とは、京都府京都市で作られている刺繍のことです。歴史は8世紀末まで遡り、794年に平安京への遷都を行った際、刺繡職人が所属する縫部司(ぬいべのつかさ)という部署が設置されたのが始まりとされています。その後、時代や流行の変化に合わせ、宮廷貴族・武士・豪商などの要望に応じて繍仏や衣服への加飾など、様々な活動を行いました。

京繍の特徴は、絹糸・金糸・銀糸を使い、15種類以上の技法を用いて華やかな作品を制作するところ。京都と同様に刺繍文化が盛んなフランスでは片手で作業を行うのに対し、京繡では専用の台に布を固定し、両手を使って刺繍を縫い進めていくため、より繊細な表現ができます。宮廷文化に裏付けられた、豪華絢爛な意匠も見どころの1つです。

京繍の制作は、図案づくりから始まります。下絵を描いて配色を決めたら、刺繍の作業の始まりです。下絵を描いた生地を専用の台に固定し、両手を使って縫っていきます。京繍の色糸は2000種類もあり、図案に合わせて20~30種類を選んで制作します。刺繍が一通り終わったら裏地にのりをかけ、仕上げを施して完成です。

応仁の乱を乗り越え、江戸時代には裕福な庶民にまで広まり、最盛期を迎えた京繍。東京へ都が遷った後や第二次世界大戦中のぜいたく禁止令など、多くの困難を乗り越え、現在まで伝えられている伝統的な技術です。昭和51年12月には、「その他の繊維製品」という分類で、経済産業大臣指定の伝統的工芸品になりました。