信楽焼

信楽焼(しがらきやき)とは、滋賀県甲賀市信楽町で生産されている焼き物のことです。でっぷりと丸みのある狸の置物が有名で、「わびさび」を趣向とする素朴な作品を多く産出しています。鎌倉・室町時代から現代にかけて生産が続いている日本六古窯の一つにも数えられており、1976年には国の伝統的工芸品に指定されました。

特徴は土質が粗く、耐火性に優れているところです。成形に使う粘土は大小さまざまな石を含んでおり、焼いている最中に石が溶けて乳白色のブツブツが表面に浮き出るものもあります。また、焼成することで赤褐色に色が付いたり(窯あじ)、灰に埋まった部分が黒褐色に発色したりすることも。窯の温度や焚き方によって表情が変わることを活かし、一点物の作品も販売されています。

制作する際は、初めに粘土を調合し、器や壺の形に成形したら乾かして、500℃〜800℃の窯で焼成します。素焼きしたものに釉薬をかけて絵付けを施し、再度1200℃〜1300℃の高温で焼くと完成です。粘土は主に、三重県と滋賀県に分布している古琵琶湖層群のものを使用しています。

歴史は鎌倉時代中期ごろまで遡り、当時は主に水瓶を生産していました。安土桃山時代に茶の湯と「わびさび」の美的感覚が発達すると、飾り気のない信楽焼は人気を博し、茶碗や水指などの茶道具も作るようになります。江戸時代には器や徳利のような生活用品を製造販売する商業としても発展しました。現在は食器類だけでなく、置物やタイルなどのインテリア用品の制作も盛んにおこなわれています。