写実主義

写実主義とは、19世紀中頃にできた身近な現実をあるがまま描くという特徴の美術の動きです。

18世紀後半のイギリスで産業革命が起こりました。これは19世紀中頃までにフランスにも広がります。この産業革命で、機械によって多くの製品が出来ていきました。そこで蒸気機関車も登場し、各地に鉄道が敷かれます。そうして社会は豊かになっていくのですが、その反面新たな問題が浮上してきたのです。

街に工場が増え、多くの人々が農村から都市へ移動します。そういった人々を工場の経営者は低賃金で働かせました。多くの製品を安く作るためです。こうして貧富の差が拡大していきます。この変化の激しい時代を反映して19世紀中頃に生まれたのが写実主義の美術なのです。

写実主義は現実のあるがままを描く絵画を主張しました。本の知識や過去の美術の研究から解放され、目の前の世界の美しさと真実を自由に求めるようになるのです。伝統的な美術の規範や規則を超えることを恐れずに真実を追求し現実を描きました。写実主義の芸術家たちは、驕っている支配層や農民や労働者の姿を描き、社会的抗議の意味合いを作品に込めたのです。

なかでもクールベは、「私に天使を描けと言うなら、天使を見せてくれ」と言ったほど、身近な現実をありのままに描いた画家でした。労働者や農民の生活、自然を忠実に絵画で再現したのです。

主要人物・作家

ギュスターヴ・クールベ、オノレ・ドーミエ、ジャン=フランソワ・ミレー