国際ゴシック様式

国際ゴシック様式とは、宮廷文化から影響を受けており、装飾的で華やかな彩色が特徴的な絵画様式です。14世紀後半以降、北イタリアやブルゴーニュ地方から、西ヨーロッパ各地へと広まりました。国際ゴシック様式が西ヨーロッパ各地に広まった要因は、芸術家の活発な移動に加え、王侯貴族の結婚や装飾写本の流通などがあります。特に装飾写本は持ち運びが簡単にできるため、上流階級の共通した美意識の醸成に大きな役割を果たしました。

装飾性に秀でた国際ゴシック様式が成立した背景には、中世ヨーロッパの不安な社会情勢があります。国際ゴシック様式の成立前、ヨーロッパではペストが大流行していました。一時は重苦しく陰鬱な作品が多く制作されていましたが、イタリアの都市シエナの画家たちがその流れを食い止めます。シエナ派の画家たちは、装飾的かつ繊細で優美な絵画様式を確立し、国際ゴシック様式の誕生の一助となったのです。

国際ゴシック様式の作品を制作した画家としてよく挙げられるのは、イタリアのシモーネ・マルティーニやロレンツォ・モナコ、ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノなどです。

シモーネ・マルティーニは国際ゴシック様式の先駆けとも言える画家で、ウフィツィ美術館の『受胎告知』を制作しました。ロレンツォ・モナコは『聖母と聖ヨハネと十字架のキリスト』、国際ゴシック様式の代表格と呼ばれるジェンティーレ・ダ・ファブリアーノは『東方三博士の礼拝』を制作しています。