多摩織

多摩織(たまおり)とは、東京都八王子市周辺で生産されている絹織物のことです。古くから「八王子織物」として親しまれており、そのうち多摩結城・風通織・紬織(つむぎおり)・綟り織(もじりおり)・変り綴(かわりつづれ)の5種類の織物が「多摩織」の名称で経済産業大臣指定の伝統的工芸品になりました。

使用する材料は、生糸と玉糸、真綿のつむぎ糸です。特徴は、軽くてシワが付きにくいところ。工程ごとに専門の職人がおり、分業制で作られています。

八王子市周辺では平安時代末期には絹織物の生産が始まっており、室町時代後期にこの地を訪れた北条氏によって奨励され、生産が盛んに行われるようになったと考えられています。江戸時代には毎月4の日と8の日に絹市が立ち、地元だけでなく近隣地域からも生糸や織物が集まるようになりました。江戸時代中期になると江戸の街の発展に合わせて人や物の流通が増加し、八王子市周辺は着物に使う布の一大産地として発展しました。

多摩織を織る際は、最初に図案と糸を作ります。近年は、図案を描くときにコンピューターを使うことも。多摩織は先染の織物であるため、布を仕立てる前に糸に色を付けておきます。糸が完成したら、糸繰り機と織機に糸をかけて固定し、緯糸を通しながら織進めていきます。1cm織るのに緯糸を100回以上通す必要があるため、1枚の布を完成させるには気が遠くなるほどの時間が必要です。織り上がったらお湯で手もみ洗いをして糊を落とし、乾燥させたり傷を確認したりしたら完成です。