天目茶碗

天目茶碗(てんもくぢゃわん)とは、茶道で使用する茶碗の一種です。「天目」というのは日本独自の呼び方で、一説によると鎌倉時代に中国浙江省の天目山にある仏寺に留学した禅僧が、帰国の際に茶碗と喫茶の文化を持ち帰ったことから名づけられたと伝わっています。器の形はすり鉢型で、口の部分は少しくびれており、底には低くて小さな円形の高台が付いているのが特徴とされています。

器の表面のコーティングに使用する釉薬は、鉄を含んだ鉄釉です。釉薬が含んでいる鉄分が全体の1~2%なら青磁に、15%以上なら黒磁になります。白磁や青磁と比べると比較的簡単に黒磁を作れるため、中国では当初、日常用の陶器として使われました。中国各地で生産され、有名な産地として建窯・吉州窯・定窯が挙げられます。

日本でも中国の珍品として重宝され、建窯産の天目茶碗は釉薬の輝きや側面に浮かび上がっている斑紋ごとに、曜変天目・油滴天目・禾目天目・灰被天目に分類されました。天目茶碗の最上級ともいわれる曜変天目は世界に3点(一説によると4点)しか現存しておらず、その全てを日本国内の美術館や寺院が所有しています。

中国の天目茶碗の影響を受け、日本でも安土桃山時代には菊花天目が生産されるようになりました。菊花天目とは瀬戸焼の一種で、焼成するとべっこう飴のような褐色になる鉄釉(飴釉)を使用しています。現在も天目茶碗の生産は行われていますが、鉄釉を用いた独特の輝きを放っていなくても、器の形さえ特徴を満たしていれば全て「天目茶碗」と呼ばれています。