更紗

更紗とは、インドを起源とする木綿地の布製品のことです。現在は世界各地で生産されており、生産地ごとにジャワ更紗、ペルシア更紗、和更紗(日本産の更紗)と呼び分けることもあります。インド風の唐草模様、人物、樹木などの文様を染めたものが多く、壁掛けや敷物、王侯貴族の衣服用の生地として使われていました。古いものだと13~14世紀ごろのインド更紗がエジプトから出土しており、500年以上前から更紗が生産されていたことと、国際的な交易品として輸出されていたことが伺えます。

発祥の地であるインドの更紗の革新的な点は、染色技術です。木綿はもともと染色に向いておらず、色が付きにくい性質を持っているのですが、インドで木綿地への染色技術が生まれ、今までにない新しい生地を生産できるようになりました。インドの更紗づくりでは、初めにミロバランという樹木の実で作った染色液で下染めをし、その上から色を発色させる媒染材を塗りました。化学反応を利用した染色技術で、インド更紗は鮮やかな赤や黄色の発色に成功し、世界中の人々を魅了しました。

日本に更紗が伝わったのは、室町時代以降のことです。まずはポルトガル船やオランダ船が長崎に更紗を持ち込み、京都や、江戸時代になると江戸へと伝わっていきました。江戸時代後期には、日本国内でも更紗を生産するようになります。著名な和更紗は、天草更紗、長崎更紗、京更紗、江戸更紗など。更紗は掛軸の表具に使う材料としても好まれ、主に一文字や風帯に用いられています。