波打ち

波打ちとは、絵画や版画がたるんだ状態を指す用語です。絵画作品は画面をきれいに見せるため、紙や布をピンと張った状態で展示することがよくあります。時間の経過とともに固定が緩んだり、何かのはずみで固定が外れたりすると、ずっと伸ばされていた紙面がたるみ、波打ったような不自然な凹凸ができるのです。作品を壁に掛けた状態で、下から懐中電灯などで光をあてると、波打っているかがよく分かります。作品を飾る際は紙面をあまり引っ張りすぎず、適度な張力で飾りましょう。

波打ちは作品を飾るときの張力以外にも、湿気が原因で発生する場合もあります。紙面が湿気を含んで膨張し、小さなシワや膨らみが入ってしまうのです。日本では梅雨から夏にかけて湿度が高くなり、湿気による浪打ちの発生の可能性がさらに高まります。湿気を放置しておくと、浪打ちだけでなくシミの原因になることも。作品を保管する場所は湿度管理を徹底し、浪打ちが見られたら修復も検討することが大切です。

絵画だと、とくにシルクスクリーンの作品によく浪打ちが発生する傾向にあります。シルクスクリーンとは、スクリーンに付いた無数の穴を通してインクを紙面に写す印刷技法です。紙の上に絵の具を乗せているため、湿気の影響で画面が波打ちやすいのです。浪打ちがひどくなると、絵の具の層が剥離してくる可能性もあります。特に、折ったり曲げたりしたまま湿気のある場所に保管をしておくと、折り目に合わせて絵の具がポロポロと崩れてしまうケースも。定期的に日陰干しをすると、作品のメンテナンスと状態確認ができます。