版上サイン

版上サイン(はんじょうさいん)とは、原画に記してあったサインをそのまま版画として印刷したもののことです。版画作品に記すサインには、印刷後に刷り上がったものへ記入するものと、あらかじめ原画に記入しておくものがあり、版上サインは後者に分類できます。版上サインは作家本人以外の人物が施すのが一般的です。作家本人がサインを施した版画は「オリジナル版画」として、高い価値が認められています。

版上サインを施すのは、エスタンプやエステートといったオリジナル版画以外の版画です。エスタンプは、作家本人は作品にしようと考えていなかったけれど、第三者が作家や遺族の了承を得て制作したもの。エステートは不慮の事故や病気により、作家本人は作品として発表するつもりだったけれど完成させられなかった作品です。いずれも作家本人が作品にサインを入れることはないため、代わりに版上サインを印刷します。作家本人がサインを記入していない分、版上サインが記されたものはオリジナル版画と比べると価値はやや下がる傾向にあります。

ただし、オリジナル版画には作家本人がサインを記入する習慣が根付く以前の作品だと、版上サインが記されたものもオリジナル版画と同等の価値が付く場合も見られます。作家本人がオリジナル版画にサインを記入する習慣は、版画協会が設立されて以降に広まりました。レンブラントのような15世紀ごろの作家、ミュシャやロートレックといった近代の作家の作品のなかには、サインの習慣があまり根付いていなかった時代背景を考慮して査定するものもあります。