玉虫塗

玉虫塗(たまむしぬり)とは、仙台市で生産されている漆工品です。光の当たり具合によって発色や光沢が変化するのが、タマムシの羽に似ているところから名づけられました。1932年に当時仙台を拠点としていた国立工芸指導所が特許を取得し、現在は東北工芸製作所が中心となって生産を続けています。主な製品の種類は、花瓶・文箱・菓子器・食器類などです。1985年に宮城県指定の伝統的工芸品にも登録され、国内向けの日用品や記念品だけでなく、皇室献上品や海外向けの輸出品としても人気があります。

特徴としては、表面の艶やかな輝きが挙げられます。玉虫塗独特の光沢を生み出しているのは、銀粉です。下地作りを終えたら銀粉を重ね、その上に漆を塗り込んでいきます。一番外側に来る漆の層の奥から銀の鈍い光沢が照り返し、タマムシの羽のような美しさを見せられるのです。使えば使うほど漆の色艶は変化し、より味わい深くなっていきます。

作り方は、大きく下地・中塗り・上塗りの3段階に分けることが可能です。下地と中塗りは上塗りを施すための準備段階で、木材や金属などでできた素地の凹凸を取り除き、表面を滑らかにしていきます。中塗りを終えると銀粉を蒔き、さらに表面を研ぎます。その後、漆を調合して色味や粘度を整えて上塗りを施し、装飾を加えて完成です。漆を塗り終えてから加飾できるようになるまで一晩から1週間ほど室(むろ)の中で乾かす必要があり、手間と時間をじっくりかけていると言えます。