花鳥画

花鳥画とは、花や鳥、昆虫などを題材にした東洋絵画のジャンルの1つです。細かく分けると、草花のみの作品は「花卉画」、草花と昆虫を描いた作品は「草虫画」と呼ぶこともあります。掛軸、屏風、襖絵、浮世絵など、様々な作品に取り入れられているのが、花鳥画の特色です。草花に鹿や兎といった動物を描いた作品も、花鳥画に含まれます。

花鳥画の発祥は、六朝時代(3~6世紀)の中国です。五代十国時代(10世紀)には、蜀の黄筌によって黄氏体が、南唐の徐煕もしくは孫の徐崇嗣によって徐氏体が成立します。双方の技法は宋時代(10~13世紀)には統合され、中国の花鳥画における規範となりました。

宋時代以降、中国の民間では寓意を取り入れた花鳥画が流通します。子孫繁栄を意味する鷺、科挙の合格を意味する亀などは人気のテーマでした。中国の花鳥画の代表例としては、明時代(15~16世紀)に呂紀が描いた『四季花鳥図軸』や、陳子和筆の『絹本淡彩花鳥図』などが挙げられます。

日本でも、平安時代には花鳥画が制作されていました。南北朝時代になると禅僧によって水墨画の花鳥画が描かれるようになります。彩色を施した花鳥画は室町時代に誕生し、日本における花鳥画は隆盛期を迎えました。

桃山時代には日本独自の様式が成立し、江戸時代中期ごろには丸山応挙をはじめ、多くの画家が写実的な作品を生み出します。日本の花鳥画の代表例は、伝狩野永徳作の『四季花鳥図屏風』や、森蘭斎筆の『花鳥図』などです。