裏打ち

裏打ち(うらうち)とは、水墨画・書・日本画といった東洋美術作品の補強や修復に使う技術のことです。絵を描いている面の裏側に紙や布などを貼りつけて、シワや折れの発生を防ぎます。水気を加えると伸び、乾燥すると縮む性質を持つ和紙・絹・裂などにのみ適用できる技術で、コピー用紙やポスターには対応していません。作業工程のなかで霧吹きの水や糊などの水分を用いるため、滲みやすい塗料を使用している作品も裏打ちを施すのは避けるのが無難です。

伝統的な手法(湿式裏打ち)で裏打ちを施す際は、初めに作品の裏面を濡らし、刷毛でシワを伸ばしていきます。次に作品の裏面をさらに湿らせ、裏打ちに使う用紙に糊を付け、作品と裏打ち用紙を貼りつけます。貼り付けたら再度刷毛でシワを取り、作品と裏打ち用紙を密着させていきます。最後に裏打ちで使用した水や糊の水分を乾かして完成です。湿式裏打ちで使用する糊は水に溶けやすい性質を持つため、裏打ちをやり直したくなった場合は古い裏打ち用紙を取り、新しい裏打ち用紙を貼りつけることもできます。

効率的に裏打ちを施す場合は、乾式裏打ちという技法を使用する場合もあります。熱で溶ける糊のフィルムを貼った裏打ち用紙を使うのが特徴です。初めに作品の裏面を濡らし、刷毛でシワを伸ばすのは湿式裏打ちと同じ。その後は専用の機械で水分を飛ばし、裏打ち用紙を重ねてもう一度専用の機械で熱を加えます。乾式裏打ちの難点は、再度裏打ちをやり直すのがとても困難なところ。作業の際は作品と裏打ち用紙の間に小さな異物が入っていないか、目を凝らすことが求められます。